世界中で増え続けている海洋ごみ。その増加量は毎年800万トンとも言われています。特にマイクロプラスチックごみは、世界中で問題視されていますよね。その一方で海洋深層水はというと、これらの問題とは全く無縁の立場にいるのです。室戸の海洋深層水は、非常にキレイな状態を維持できているんです。それは、いったい何故なのでしょうか?
海洋汚染問題ってなに?
いま、世界中で問題になっている海洋汚染問題、そして海洋汚染問題の中でも、最も問題視されているのがプラスチックごみです。
プラスチックごみは、細かくなっても自然分解することがありません。また、5mm以下になったプラスチックごみはマイクロプラスチックと呼ばれています。
この、マイクロプラスチックが世界中の海に浮遊し、魚などの海洋生物の体内にも入り込み、その結果、ヒトの健康にも影響を与えるとも考えられています。
ちなみに、マイクロプラスチックには有害物質が含まれていることが少なくありません。
この問題は、人類にとって、地球にとって、地球上で生きる全ての動植物にとって、非常に大きな問題なんです。
海洋深層水も汚染されてるの?
#3の回では、室戸岬の海洋深層水は不純物が含まれない、とってもキレイなお水だということをご説明させていただきました。
海洋深層水の汲み上げ時に使用されているポンプのフィルターも、全く汚れることが無いので、何年も交換する必要が無いほどだという事を。
ではなぜ、室戸の海洋深層水は汚染されず、キレイな海水のままでいられるのでしょう?
その謎を、わかりやすくご説明させていただきます。
なぜ?室戸の海洋深層水はキレイなの?
室戸の海洋深層水は、遠く北の果て”アラスカ”付近の海で海底に潜り込み、そして1000年近くの時間をかけて、汚れた海水と混ざる事なく、太平洋の奥深くの海底を這うように流れて室戸岬にたどり着いているんです。つまり、約1000年前のままの海水を汲み上げているので、汚れていないんです。
でも、「同じ海だからやっぱり不純物やゴミは混ざっちゃうんじゃないの?」と、疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
いえいえ、実は物理学的には水って非常に混ざりづらい性質なんですよ!
わかりやすく言うと、お料理なんかするときに、お鍋の中ってお玉やサイ箸なんかでかき混ぜないと混ざらないですよね。
コップやグラスの中でも、アイスコーヒーにミルクやガムシロップを入れても、マドラーなんかでかき混ぜなければ混ざらないですよね。
お鍋やグラスのような小さな器の中でも、かき混ぜないと混ざらないのですから、海のような大きな器の中では、なかなか混ざらないんです。
それでも、波や潮の流れなんかが有るわけですから、「混ざらない」って言われても、不思議に思う方もいらっしゃると思います。
実は、混ざりづらいという水の性質そのもの以外にも、海洋深層水が他の海水と混ざりにくい理由はいくつかあるんです。
海水の塩分濃度や温度にも混ざらない秘密が!
海洋深層水が海面に近いところの海水などと混ざりにくいという性質には、2つの理由があります。
その一つは海洋深層水の塩分濃度が高いこと。
もう一つは海洋深層水の水温が非常に低いことなんです。
海洋深層水は塩分濃度が高い
室戸の海洋深層水は、氷山がたくさん浮かんでいるような極北の海で作られています。
北極海の近くの非常に寒いところの海なので、海水も凍ってしまうんです。
ちなみに、真水が0℃で凍ることは誰でも知ってますよね。でも、塩水って0℃では凍らないことはご存知ですか?塩水の氷点(凍り始める温度)って、0℃以下なんです。塩分が高くなると、マイナス20℃でも凍らないことも有るそうです。
スポーツドリンクを凍らせて飲んでいると、最後の方に溶けた氷って、味が無くなって真水に近いですよね。あれと同じ現象です。(凍りにくい塩分が濃い氷から溶けるということ。)
海水が少しずつ凍っていくとき、最後まで凍らなかった海水は塩分濃度の高い海水になるんです。すると、その海水は塩分濃度が高いので比重が重くなり、深海に沈んでいくという仕組みで海洋深層水は作られています。
海洋深層水は水温がすごく低い
海洋深層水は、北極海の近くの海水から作られますから、非常に冷たいんです。水は冷たいと比重が重くなって、下の方に沈んでいきます。
お風呂に入るときに、かき混ぜないと上の方が熱くて下の方が冷たいっていうことありませんか?あれと同じ現象なんです。
塩分濃度が高くて水温の低い海水は…
つまり、塩分濃度が高く凍るほど冷たい海水の比重は、とても重いので深海に沈んでいきます。そしてその沈んだ海水が海洋深層水になるんです。逆に、太陽光や大気温で温められる事により、海面に近い海水は海水温度が高くなります。
温度の高い水と低い水が混ざりづらい事は、お風呂の例を取ってみてもわかりますよね。
では、塩分濃度の高い水と低い水ではどうでしょうか?
塩分濃度の高い水と低い水が混ざりづらいという事が一番わかりやすい場所。それは、川と海が交わる河口付近なんです。
陸に近い海には川の水、つまり真水が流れ込んでいますが、河口付近では真水(川の水)と塩水(海水)が混ざらずに存在しているんです。
実際に、水のキレイな川と海との河口だと、泳いでいる人が水中メガネなどで水中を見てわかるほどに海水(塩水)と川の水(真水)がハッキリと分かれているのが見えるそうです。※海の水は塩水なので、少し白っぽく見える。
また、世界の中でも最大級の川であるアマゾン川の河口では、河口から5kmも先の海でも海面には真水が存在するという話も有るんですよ!スゴイですよね!
同じ水、同じ海水でも「塩分濃度の差」「水温の差」によって、こんなにも混ざらないものなんです!
【まとめ】室戸の海洋深層水とは
人間によって汚染された海水と混ざることなく、深海の海底を這うようにして室戸岬までやって来た、1000年近く昔のキレイな海水、それが室戸の海洋深層水です!
いかがでしょう?
室戸の海洋深層水がキレイで有り続けられる理由をおわかりいただけたでしょうか?
東日本大震災時の福島第一原子力発電所事故の影響による海洋汚染、そして日本中が心配している処理水の海洋放出の問題について、よく質問されます。
「室戸の海洋深層水に放射性物質は混ざってないの?」
「本当に大丈夫なの?」
気になりますよね。心配ですよね。
もちろん、それが普通の感覚だと私たちも思っています。
室戸の海洋深層水は、公的機関での放射性物質のテストを月1回のペースで行っています。
その結果、
検出されておりません。
ここまで皆さんにお伝えしてきた通りなのですが、陸地から流れてきた水と海洋深層水は混ざることはありませんので。少なくとも、あと800年は安心です。